社員通信 ツリークライミング技術とリギングテクニック(枝や幹をコントロールしながら吊り下ろす技術)による高木越境枝の剪定作業

ご依頼いただいたのは、渋谷区内の某神社様で、作業の目的は隣地へ大きく越境した枝を敷地境界線まで切り戻すことでした。

【作業前】

【作業後】

 

伸び伸びと育ったケヤキやクスノキで樹高は20メートルを優に超え、その幹は敷地境界線から僅かに入ったところにありました。

境界線から上を見上げて切る位置を確認すると、幹近くのかなり太い部分から枝を切る必要がありました。

作業範囲には、境界のフェンスや電線・通信ケーブル、近隣の庭木や花壇等があり、剪定枝を下すことが出来る場所は樹木から少し離れた細い通路に限られていました。

大きな樹木の剪定や伐採の場合は、高所作業車とクレーンを併用して行う「吊るし切り」という方法で行います。この方法では、切った枝や幹を思い通りの場所に安全に下ろすことができます。

今回の越境した枝の剪定作業においては、クレーンを設置するスペースがなく無く、その場合は作業員が樹木に登り込み、「吊るし切り作業」を行うことになります。

「ツリークライミング技術」と「リギングテクニック」を駆使しての作業です。

樹上作業は危険度が高く、一つ間違えれば大きな労働災害を招く恐れがあることから、的確な安全管理と作業技術が求められます。

“ツリークライミング技術”はロッククライミングなどで使用される道具やロープワークテクニック(結びの技術)を応用して発達させたものが多く、体を固定する「ハーネス」やクライミングロープに設置して安全に昇り降りをするための「昇降機」などは、ツリークライミング専用の器具が開発されており、それらを使用して行う安全な木登り技術は樹木剪定や伐採の現場にも取り入れられています。

大木に登る・樹上で作業位置まで移動し適切なポジショニングをとるといった高度な“ツリークライミング技術”に加え、樹上でチェーンソーやノコギリを扱う技術、樹木を保護しながら枝・幹を適切にカッティングする技術など、高所剪定技術者としての熟練した技術が要求されます。

そして大枝や幹を目的の場所にコントロールしながら吊り下ろす技術(リギングテクニック)は、的確なワークプランと樹上と地上の作業者のチームプレーによる息の合ったロープ操作が求められます。

【ワークプラン】

 

  1. 作業者①が切る枝に吊るし用のロープ(ピンク色破線)を付けて、白色の破線の位置で枝を切断します。(作業者①に衝突するのを防止するために“振れ止め用のロープ”を設置しています。)
  2. 吊るし用ロープ(ピンク色破線)は作業者②の上部に設けられた滑車Aを通り、幹元に取り付けた手巻きウインチに巻き付けてあり、地上作業員がそのウインチを使ってロープを巻き揚げ、作業者②の方へ切った枝を引き寄せます。
  3. 作業者②は手元に引き寄せた枝を、紫線ロープ(スピードライン)に取り付けた“滑車B”に吊るし替えます。
  4. 作業者②は【工程1.】で設置した“振れ止め用のロープ”をスピードコントロール用として利用しながらスピードラインに沿って滑車Bを滑らせ枝を降下させます。
  5. 横方向に張った赤線ロープには滑車Cが取り付けてあり、その滑車Cにスピードラインを通すことで屈折させ、「枝下ろしポイント」にスピードラインを誘導しています。
  6. スピードコントロールされて下りてきた剪定枝が“枝下ろしポイントまで辿り着いたら、地上の作業員は周囲の安全を確かめながら赤線ロープとスピードラインの張りを緩め、剪定枝を地上へ誘導し受け取ります。

 

【実際の作業の様子】

下記動画のような「吊るし切り作業」を繰り返し行い、徐々に枝を切り詰め、隣地へ大きく越境した枝を敷地境界線まで切り戻すことができました。

( 前 )

 

( 中 )

 

( 後 )

 

台風や積雪などの影響により樹木に大きな負荷がかかることで、枝や幹が折れたり、樹木そのものが倒れたりする場合があります。特に大きな樹木でそれが起こると甚大な被害となる可能性があります。道路・鉄道・電線などライフラインへの影響や人的被害なども考えられます。大きな被害を出さないためにも、樹木の剪定や伐採、支障枝や危険木の処理など、樹木の状態に関わらず、事前に予防しておくことが大切です。

(2021/08/24 K.O)